高田喜佐さんの靴はart

 神戸ファッション美術館で、2006年に逝去した靴デザイナーの高田喜佐さんの展覧会「KISSA展」があった。喜佐さんが自ら保存していた靴1500点が遺族から同美術館に寄贈され、その中から800点が展示された。それらは一つ一つが完成されたartであり、品位があり時を経ても斬新なデザインと色使いが楽しい。
 会場に入ると,まず最初の部屋に一世を風靡したおしゃれなズック靴「KISSA Sport」が展示されていた。その90%以上は日進ゴム株式会社が1980年頃から25年間作ってきたものだ。最初の数年は大手メーカで製造していたが、そこに製造を受けてもらえなくなり、喜佐さんに頼まれて日進ゴムが引き受けた。渡邉社長は、「喜佐さんの要望にはできるだけ添うように」という指示を出し、採算度外視で彼女の靴づくりを支え続けた。
 担当者は「物づくりに対して真摯な喜佐さんと共に靴作りが出来たことで、学ばさせていただくことが多かった。」と当時を語り自分たちが作り続けてきたという自負心を感じさせた。そういう会社のカラーは、 同じく採算度外視で「子どもの足と靴を考える会」の「歩育シューズ]の生産を引き受けもらった当会だからこそ見える、日進ゴム株式会社の知られざる一面なのかもしれない。大野貞枝